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father / 金川晋吾

商品詳細

25cm×18cm 172P


父親の存在と不在を通じて人間の心の奥底を「身近な他者」としてとらえた新鋭写真家、金川晋吾による初作品集。

人間の「わからない心」を、写真を通して見つめ続けた彷徨の軌跡。

ごく普通の日常を捨てて、突然失踪する父。家族の戸惑いをよそに、戻っては失踪を繰り返した。家族から離れ、一人になってからも父は失踪を続け、仕事も辞め、自己破産に至り、社会との接点をもたなくなる。

―――

ある日突然いなくなり、
しばらくのあいだ姿が見えなくなる。
そのような「蒸発」を繰り返すことで、
私の父は何もない人間になった。
何もない人間になること。
それはおそらく父自身が望んだことだ。
何もない人間になれば、
自分のことについても、
自分のことを考えてくれる他人についても、
考える必要がなくなるからだ。

私の父は寒いときには震えることはすると思う。
だが、「なぜ震えているのか」と尋ねられても、
父は、「わからない」と答えるだろう。
本当にわからないのか、
それともただ考えたくないからなのか、
それは他人からはわからない。
おそらく、本人もわかっていない。


金川晋吾(かながわ・しんご)
1981年、京都府生まれ。神戸大学発達科学部人間発達学科卒業。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士課程修了。第12回三木淳賞受賞。本書が初めての著書。