ニューヨーク精神科医の人間図書館 / ナ・ジョンホ

ニューヨーク精神科医の人間図書館 / ナ・ジョンホ

販売価格: 1,980円(税込)

19cm×13cm 175P


アジア系移民である著者が、ニューヨークの精神科医として出会った患者たちの、要約できない人生の断片を綴ったエッセイ集。

子犬を連れて精神科ERを訪れたホームレスのテディ、元白人至上主義のジミーのタトゥー、恐れを知らない元てんかん患者、元医師の依存症患者、自閉スペクトラム症患者の母、トランスジェンダーのうつ病患者、叔父からの虐待のトラウマに苦しむアリ。

タイトルの「人間図書館(Human Library)」とは、利用者が本の代わりに「人」を借り、30分程度話をする、という取り組みで、デンマークで始まり今では世界中に広まっている。著者はそれになぞらえて、自身が研修医だった頃に出会った患者との出会いや、やりとりを振り返り「人間図書館の書庫の片隅の物語」として本書を書いた。

「自分と何の共通点もない人に、共感することは可能だろうか?」
アジア系移民である著者自身も時に差別を受けながら、人種も性別も年齢も職業もジェンダー・アイデンティティも異なる他者と向き合っていく。
簡単に、答えは出ない。一発で治る特効薬もないこともある。それでも。

差別、偏見、スティグマを乗り越え、共に生きる一歩を踏み出すために。
各篇が短い文章で構成されており、過酷な状況を淡々とつづった静かな文章も美しいので、幅広い読者にお勧めしたい一冊です。