テント日記/「縫うこと、着ること、語ること。」 / 長島有里枝

テント日記/「縫うこと、着ること、語ること。」 / 長島有里枝

販売価格: 2,530円(税込)

20cm×14cm 208P

再入荷しました。

写真家として、アーティストとして常にクリティカルな作品を生み出す注目の作家、長島有里枝が二人の”母”との、それぞれの共同制作の中で綴った日記。


家庭という秘密の場所での、女たちの物語


長年縛られ、苦しんできた母との関係に変化を生み出すために始めたテントの共同制作。母と初めて向き合い、制作過程の出来事や思いの変化を綴った。テントの制作で長島が目指したことは、家族という美しい物語を紡ぐことではない。その逆だ。長島はカメラのシャッターを切るように、母親を冷徹なまなざしで見つめる。さまざまな記憶が呼び起こされ、過去に「わたし」が摂食障害を患い、心療内科を受診していたことと母との関連も見えてくる。 母との関係にもがいてきた「わたし」も今は「母」になり、過去の母親の言動を思い返すとき、唯一の話し相手だった祖母を亡くしてから、心を病んだ母の姿が浮かび上がる。その母を受け止められなかった父、自分を責めることをやめない母、その矛先が娘に向いたときに耐えるしかなかったこと……。

家という閉ざされた空間は、その機能を逆転させ、そこで傷つく人や深刻な問題を隠す危険な場所にもなる。本書で明らかになるのは、完成したテントからは見えない、一見普通の家族の、いびつさであり、破れであり、社会の構造的な軋轢から逃れられず、葛藤しながら生きる女たちの物語である。そこに、お互いを理解しあおうとする愛があるからこそ、伝わるものがある。

「『縫うこと、着ること、語ること。』日記」は、長島が神戸に住むパートナーの母とタープを制作した日記である。「婚姻関係だけが家族の枠組みを規定するのはおかしい。状況を男にコントロールされることへの抵抗でもあった」と長島は綴る。二つの制作過程の濃密な時間を体験した読者は、家族について改めてとらえ直すことになるだろう。