ありふれたくじら / 是恒さくら

ありふれたくじら / 是恒さくら

販売価格: 2,640円(税込)

数量:
19cm×13cm 320P
テキスト:日英

国内外各地の鯨類と人の関わりや海のフォークロアをフィールドワークを通して探り、エッセイや詩、刺繍、造形作品として発表しているアーティスト、是恒さくらによる作品集。

本書は、是恒が東北やアラスカなど各地でフィールドワークするなかで出会った、鯨にまつわる文化や物語を集め、刺繍作品とともに収録したリトルプレス『ありふれたくじら』の第1号から第5号をあわせ、再編集したもの。

風に乗って運ばれてくる鯨の匂い、鯨の油であげたかりんとう、鯨を神さまとして祀った石碑、町の象徴だった捕鯨船、鯨の内臓膜とセイウチの牙を使ってつくったドラム、狩りの結果を予言するダンス、おじいさんがつくった古式捕鯨の鯨舟、大漁を祝って拵えられた着物に描かれた鯨――。

網走、石巻、三浦半島、和歌山、アラスカなど、世界各地の人びとの暮らしに息づく「ありふれたくじら」のはなし。

ささやかで力強い人びとの営みから見える鯨の姿は、大きな歴史の流れや捕鯨の是非をめぐる議論、“スーパー・ホエール”のような超現実的な鯨のイメージとは、異なる印象を与えてくれます。


ちりぢりになった布きれを縫い合わせ、刺繍をほどこし美しく生まれ変わらせるように、世界にちらばり時に諍いの元となる鯨にまつわる物語を集め、そのイメージを作り直すこともできるのではないか。本書では、さまざまな土地に暮らす人たちにとっての鯨の話を尋ねてまわる。そうして綴った物語に刺繍を添えて、本を編む。やがては一枚のパッチワーク・キルトのように、本書がまだ見ぬ鯨のイメージとなり、世界を包むことができるように。
(本文より)


鯨という大きな存在の背中に乗って文章と刺繍でこの世界を編み直すような、壮大で繊細なこの試み。

ひとつ新しい視座を得るたびに、世界はまた豊かになっていきます。


是恒さくら(これつねさくら)
1986年広島県生まれ。広島県拠点。
2010年アラスカ大学フェアバンクス校卒業。在学中はネイティブ・アート、絵画、彫刻を学ぶ。2017年東北芸術工科大学大学院修士課程修了。国内外各地の鯨類と人の関わりや海のフォークロアをフィールドワークを通して探り、エッセイや詩のリトルプレス、刺繡作品として発表する。リトルプレス『ありふれたくじら』主宰。2018年〜2021年、東北大学東北アジア研究センター災害人文学ユニット学術研究員。2022年〜2023年、文化庁新進芸術家海外研修制度・研修員としてノルウェーに滞在し、オスロ大学文化研究・東洋言語学科の研究プロジェクト「Whales of Power」に客員研究員として参加。2025年、国際芸術祭「あいち2025」に参加。
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