SNOW / VANESSA WINSHIP（ヴァネッサ・ウィンシップ）

25cm×19cm 104P

親密なポートレートを軸にしたドキュメンタリー作品が世界的に評価の高いイギリス人フォトグラファー、ヴァネッサ・ウィンシップ（Vanessa Winship）の作品集。


本作は、人物を被写体とすることが多い彼女の通常の作品とはやや異なり、ランドスケープを中心にまとめられている。カラーとモノクロの間を行き来しながら、冬の田園風景を描き、木造家屋や荒れ果てた建造物、時には生きている（そして亡くなった）動物たちが、しばしば登場する。繊細で率直、深遠、そして巧みな技巧を駆使し、象徴性に富み、彼女の独特の視覚表現で表現された写真は、繊細でありながらドラマチックな感覚を伴う、詩情豊かな画面を形成している。


これらの被写体との間の物理的な距離感は、自分もこの世界では見知らぬ人に過ぎないということを最終的に認識しながら、この場所とつながり、この場所を理解しようとする作家の葛藤を体現しているように見える。

この疎外感は、本書に収録された、詩人で小説家のジェム・ポスターによる一編のフィクションにも反映されている。この小説は、ある女性ポートレート写真家とその不機嫌な被写体の話だが、この人物はヴァネッサ・ウィンシップ自身ではないし、被写体もウィンシップの写真に写っている人ではない。ポスターの作品は、想像上の構成に基づくフィクションである。この複雑な本のもう一つの魅力は、常に物語の滑りやすさを露呈し、安易な読みを不安定にしようとすることである。

本作にな具体的なストーリーは提示されていない。そして、それ故に写真そのものが持つ、ある種の説得力を増しているのだ。