フェアな関係 / 兼桝綾
18cm×13cm 152P
地元と東京、仕事とジェンダー、恋愛、セックス、結婚。
この社会にいる女性たちの自我を描く、注目の作家、兼桝綾による、第一小説集。
雑誌『仕事文脈』で大きな反響を呼んだ表題作「フェアな関係」に書き下ろし続編を加え緊急書籍化!
―――
私は一気に喋った。セックスがしたいこと。セックスはしたいけど子どもがほしくないこと。自分の体調が悪くなるのが嫌だし、仕事の時間が奪われるのも嫌だし、そもそも子どもというものを愛せると思ったことが一度もないし、とにかく全部嫌であること。夫はサンダルの片方を持ったまま呆気にとられていたが、「そんなに嫌なのに、何で、子どもいてもいいかもねって言ったの……」と当たり前の疑問を呟いた。私はもう、今更隠し立てすることもないので、あたりも憚らず叫んだ。
「だから、有紀君に嫌がられないセックスがしたかったからに決まってるじゃん!」(「フェアな関係III」より)
地元と東京、仕事とジェンダー、恋愛、セックス、結婚。
この社会にいる女性たちの自我を描く、注目の作家、兼桝綾による、第一小説集。
雑誌『仕事文脈』で大きな反響を呼んだ表題作「フェアな関係」に書き下ろし続編を加え緊急書籍化!
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私は一気に喋った。セックスがしたいこと。セックスはしたいけど子どもがほしくないこと。自分の体調が悪くなるのが嫌だし、仕事の時間が奪われるのも嫌だし、そもそも子どもというものを愛せると思ったことが一度もないし、とにかく全部嫌であること。夫はサンダルの片方を持ったまま呆気にとられていたが、「そんなに嫌なのに、何で、子どもいてもいいかもねって言ったの……」と当たり前の疑問を呟いた。私はもう、今更隠し立てすることもないので、あたりも憚らず叫んだ。
「だから、有紀君に嫌がられないセックスがしたかったからに決まってるじゃん!」(「フェアな関係III」より)