とても小さな理解のための / 向坂くじら

とても小さな理解のための / 向坂くじら

販売価格: 2,200円(税込)

16cm×13cm  232P


ライブパフォーマンスや詩のワークショップなどでも活躍中の気鋭の詩人・向坂くじらによる第1詩集が、増補・新装版としてリイシュー。

ユーモアとペーソスと鋭い批評的な言葉が綯い交ぜとなった、理解と愛をめぐる四十五篇の詩。


わたしは家事が嫌いだ
風呂掃除も煮炊きもゴミ捨ても憎い
油も泡も水もみんな憎い
タオルの端と端をつまんで
指先であわせるなんて考えられない
壁からは四方くまなく甲高い音がして
さっきわたしが磨いた蛇口が光をみらみらぶつけてくる
わたしは月子をくり返し呼ぶ
月子
月子
月子

月子は 歌い出す前に死ぬつもりでいる
それでいて
九十五歳くらいまで生きるつもりでいる

(「月子、ハズゴーン」より)


ーーー

日々の息苦しさからの解放。
ここに綴られた詩は、あらゆる事象の境界を
溶かし、生まれたての眼で世界を見せてくれる。
又吉直樹(お笑い芸人)



幼さを内包しながら、少女は溶ける。
羽化した大人の身体。虫の眼で見つめる世界。
日常の美しさと痛みを描き出す、透明な言葉たち。
今日マチ子(漫画家)



「幸福な人間に詩は書けない」とある詩人は言ったが、わたしはそれを信じない。くじらさんは手を伸ばす。いま匂いや重みをもつきみ、おまえ、あなたへと。あなたの向こうの窓やその先へと。その道すがら、出会う誰かと互いに呼吸を渡し合って、生きて詩を書きつづける彼女のことを、わたしは誰よりも信じている。
堀静香(歌人、エッセイスト)




向坂くじら(さきさかくじら)
詩人。
国語教室ことぱ舎(埼玉県桶川市)代表。Gt.クマガイユウヤとのユニット「Anti-Trench」にて詩と朗読を担当、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」などに出演。2022年7月、第一詩集「とても小さな理解のための」刊行。資生堂「web花椿」、詩誌「て、わたし」、「Tokyo Poetry Journal(英訳:Jordan A.Y. Smith)」などに詩作品掲載。第1回秋吉久美子賞最終候補。びーれびしろねこ社賞大賞受賞。