とても小さな理解のための / 向坂くじら

とても小さな理解のための / 向坂くじら

販売価格: 1,760円(税込)

19cm×13cm  220P


ライブパフォーマンスや詩のワークショップなどでも活躍中の気鋭の詩人・向坂くじらによる第1詩集。

ユーモアとペーソスと鋭い批評的な言葉が綯い交ぜとなった、理解と愛をめぐる四十五篇の詩。


わたしは家事が嫌いだ
風呂掃除も煮炊きもゴミ捨ても憎い
油も泡も水もみんな憎い
タオルの端と端をつまんで
指先であわせるなんて考えられない
壁からは四方くまなく甲高い音がして
さっきわたしが磨いた蛇口が光をみらみらぶつけてくる
わたしは月子をくり返し呼ぶ
月子
月子
月子

月子は 歌い出す前に死ぬつもりでいる
それでいて
九十五歳くらいまで生きるつもりでいる

(「月子、ハズゴーン」より)



向坂くじら(さきさかくじら)
詩人。
国語教室ことぱ舎(埼玉県桶川市)代表。Gt.クマガイユウヤとのユニット「Anti-Trench」にて詩と朗読を担当、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」などに出演。2022年7月、第一詩集「とても小さな理解のための」刊行。資生堂「web花椿」、詩誌「て、わたし」、「Tokyo Poetry Journal(英訳:Jordan A.Y. Smith)」などに詩作品掲載。第1回秋吉久美子賞最終候補。びーれびしろねこ社賞大賞受賞。