ガチョウの本 / イーユン・リー

19cm×13cm　296P

“中国のチェーホフ”とも呼ばれるイーユン・リーの最新邦訳作。本書で2023年度ペン/フォークナー賞を受賞しています。

フランスの貧しい農村で育った二人の少女、アニエスとファビエンヌ。厳しい現実から逃避するように、ファビエンヌが物語り、アニエスが記述する。二人はこの小説を書くという「遊び」に夢中になっていく。けれど、アニエスの名義で発表されたこの小説は話題となり、事態は思わぬ方向へ進んでいく。


ふたりの少女は、全身で戦っていた。
ままならない現実を、想像力で作り変えること。
自分の人生を他の誰かの「物語」に集約させることを拒むこと。
けれど、本当はわかっていた。それが永遠に続くものではないということも。

アニエスとファビエンヌの会話、架空のボーイフレンドを挟んだ手紙のやりとり、現実と非現実のあわいにあるもの。誰もがきっと通り過ぎてきた”あの頃”を、鮮やかな痛みと共に思い出すことでしょう。
とても美しい小説です。