眠る木 / 上原沙也加
22cm×20cm 160P
沖縄で生まれ、再びその地で暮らしながら写真を撮る、上原沙也加の初写真集。
見慣れたはずの風景の細部のなかに、いく層にも折り重なっていること。
身近な街を歩き、ときにバスで離れた街に降り立って撮影する風景には、ほとんど人は写っていない。マネキンの指、レストランの客席、ジュークボックスを掠める機影、布貼りの聖書、マクドナルドのサイン......。すべて日常的な光景は人の営みを湛え、声なき声で語りかけられているような気配を帯びる。自分の生活の場所から、それぞれが経てきた時間を想像するような地続きの眼差しが、写真にある。
いくつもの痕跡を秘め、歴史の層を重ね、存在が消失してもなお、そこに在る風景。複雑な時間への回路と、沈黙の奥にある痛みを写真は指し示す。
タイトル『眠る木』は、本書に収められたさまざまな木のシルエットと同時に、ギンネムを殊に想起させる。
又吉栄喜が小説「ギンネム屋敷」の扉に、「終戦後、破壊のあとをカムフラージュするため、米軍は沖縄全土にこの木(ギンネム)の種を撒いた」と記すように、沖縄のどこにでも繁茂しているギンネム。土地に根を張ったこの木から、フェンスのような表紙の模様は施された。その上に、明暗のあいだに浮かびながら、マネキンの指の写真はある。
上原沙也加
1993年沖縄県生まれ。写真家。2016年、東京造形大学卒業。同年、消費の対象として作り上げられた「沖縄」の記号的解釈による既存のイメージではなく、誰かの生活の延長線上にある地続きの場としての沖縄の日常の風景を捉えようとしたシリーズ「白い季節」を発表。2019年、写真プロジェクト「沖縄写真タイフーン〈北から 南から〉」に選ばれ、東京・沖縄の二会場にて展覧会「The Others」を開催(キヤノンオープンギャラリー 1、INTERFACE - Shomei Tomatsu Lab.)。風景のなかに立ち現れる記憶や傷跡、場所が保持している時間の層の断面を捉えようと試みる一連の写真を展示した。 2020年、同作で第36回写真の町 東川賞新人作家賞受賞。2021年、 シリーズの続篇となる「The Others 2020-2021」展を開催 (IG Photo Gallery)。
沖縄で生まれ、再びその地で暮らしながら写真を撮る、上原沙也加の初写真集。
見慣れたはずの風景の細部のなかに、いく層にも折り重なっていること。
身近な街を歩き、ときにバスで離れた街に降り立って撮影する風景には、ほとんど人は写っていない。マネキンの指、レストランの客席、ジュークボックスを掠める機影、布貼りの聖書、マクドナルドのサイン......。すべて日常的な光景は人の営みを湛え、声なき声で語りかけられているような気配を帯びる。自分の生活の場所から、それぞれが経てきた時間を想像するような地続きの眼差しが、写真にある。
いくつもの痕跡を秘め、歴史の層を重ね、存在が消失してもなお、そこに在る風景。複雑な時間への回路と、沈黙の奥にある痛みを写真は指し示す。
タイトル『眠る木』は、本書に収められたさまざまな木のシルエットと同時に、ギンネムを殊に想起させる。
又吉栄喜が小説「ギンネム屋敷」の扉に、「終戦後、破壊のあとをカムフラージュするため、米軍は沖縄全土にこの木(ギンネム)の種を撒いた」と記すように、沖縄のどこにでも繁茂しているギンネム。土地に根を張ったこの木から、フェンスのような表紙の模様は施された。その上に、明暗のあいだに浮かびながら、マネキンの指の写真はある。
上原沙也加
1993年沖縄県生まれ。写真家。2016年、東京造形大学卒業。同年、消費の対象として作り上げられた「沖縄」の記号的解釈による既存のイメージではなく、誰かの生活の延長線上にある地続きの場としての沖縄の日常の風景を捉えようとしたシリーズ「白い季節」を発表。2019年、写真プロジェクト「沖縄写真タイフーン〈北から 南から〉」に選ばれ、東京・沖縄の二会場にて展覧会「The Others」を開催(キヤノンオープンギャラリー 1、INTERFACE - Shomei Tomatsu Lab.)。風景のなかに立ち現れる記憶や傷跡、場所が保持している時間の層の断面を捉えようと試みる一連の写真を展示した。 2020年、同作で第36回写真の町 東川賞新人作家賞受賞。2021年、 シリーズの続篇となる「The Others 2020-2021」展を開催 (IG Photo Gallery)。