BACK TO NIKOLA-LENIVETS / Hidemi Nishida、Piercarlo Quecchia

BACK TO NIKOLA-LENIVETS / Hidemi Nishida、Piercarlo Quecchia

販売価格: 8,580円(税込)

数量:
26cm×19.5cm
112P+26P
初版限定200部発行


美術家のヒデミ・ニシダと、写真家のピアカルロ・クエッキアの二人による作品集。

二人は、2018年から2020年にかけ、モスクワの南西200kmに存在する巨大な野外芸術公園「ニコラ・レニヴェツ」をそれぞれの視点で取材してきた。本書には、「ニコラ・レニヴェツ」に関わる27人のインタヴュー(日本語テキスト)と、ピアカルロ・クエッキアが撮影した彼らのポートレイトが納められている。

この芸術公園が展開する地域は、もともと幾つかの集落からなるコルホーズ(集団農場)地帯だったが、1991年のソビエト崩壊後、この地域のコルホーズも徐々に解体され、そのほとんどの集落が消滅した。その村の一つがニコラ・レニヴェツ村である。多くの旧コルホーズ集落と同様に産業を失ったニコラ・レニヴェツだったが、2000年代初頭から、ここへ移住してきた芸術家と、周囲に住む元コルホーズ労働者たちによって、巨大な野外美術作品が作られだした。その活動は徐々に大きくなり、今では他に見られない巨大な芸術地帯を形成し、インディペンデントな芸術公園として地域の経済を支える重要な産業にまで発展ししてきた。

ニシダとクエッキアはこの巨大な芸術公園が、政府や巨大企業の援助を受けない、独立した活動であることに注目し、そこにどのようなバックグラウンドやストーリーがあるのか取材を試みた。そこで見えてきたのは、かつてはコルホーズの労働に従事し、今では美術作品の制作や公園維持を生業とする、‟芸術の労働者たち”の存在だった。大きな時代の変化を経験してきたこの土地の労働者たちは、今、芸術を術としながら、その生活を送っている。高等美術教育の必要や、巨大なパトロンの存在はここにはない。ここには生き延びるための豊かな術として、誰にでも芸術が存在しているのだ。資本主義の限界がさけばれる昨今、ニコラ・レニヴェツの労働者たちの姿に次代の社会を作る一つのヒントを見出せるような気がする。



ヒデミ・ニシダ(西田秀己)
ヒデミ・ニシダは東京をベースに活動する美術家/研究者/教育者。美術家としては、建築的な手法をベースに、風景との対話を生む環境インスタレーションを多く手がけ、当たり前にそこにある周囲の環境や、意識しなければ見えにくい事象に眼差しを向け、世界の広がりや、その美しいディテールに触れる作品を制作する。これまでに、中之条ビエンナーレ(2019年、中之条)、By the mountain path、(2015年、ロンドン)、光州ビエンナーレ(2014年、韓国光州)、札幌国際芸術祭(2014年、札幌)、他多数で作品を発表する。2017年にデルフィーナ・ファンデーション レジデンスフェローとしてロンドンに3ヶ月間滞在。2018年には竹圍工作室レジデンスアーティストとして台北に3ヶ月間滞在。2018年から2019年にかけポーラ美術振興財団在外研修員としてモスクワに1年間滞在する。2020年から、女子美術大学 助教。


ピアカルロ・クエッキア
ピアカルロ・クエッキアは1988年、ブレシア生まれの写真家/建築家。写真家として活動しながら、ミラノとモスクワで建築を学び、卒業後はバーゼルのヘルツォーク&ド・ムーロンでアーキテクトとして2年間働いた。建築事務所に勤めながら、写真家としてのリサーチと制作も継続し、2018年には、最初の写真プロジェクト<The Sound Mirror Portraits>を発表している。2019年からはDSL Studioに所属し、建築と写真を行き来しながら創作活動を行っている。クエッキアは一貫して、異なる文化によってもたらされる現実を、彼独自の美的視点から眺め、再解釈する作品を制作してきた。これまでに、ADI Design Museum(2022年、ミラノ)、Centro per l’Arte Contemporanea Luigi Pecci(2021年、プラト)等で作品を発表する。