僕は行くよ / 土岐友浩
19cm×13cm 176P
前歌集『Bootleg』で現代歌人集会賞を受賞した歌人、土岐友浩による第二歌集。
過ぎ去った平成の記憶を掘り起こし時代精神の深層にせまる「落下するヒポカンパス」、敬服する知識人の死を悼む「黒猫」など270首を収録。
土岐友浩の歌は、怯まずに「時代」と「事件」に真向かう。永劫のような歌史の果てに展かれてある現世の、ライトブルーの汀に寄せくる、その歌の姿を見よ。われらの書く一語一語は瞬間の記憶、漣のような刹那の繰り返しだ。荒らげず、みずからの口語を歌に託す土岐友浩の声の、驚くべき優しさ。まだ完了してはいないから過去は棄てない、でも僕は行くよ、と彼は言う。その背に、さよならとも言わず手を振る、それが土岐友浩の歌を読むわれらの姿だ。
(稲川方人)
カステラは乾きやすくて本題に辿りつかない感触がある
ありふれた悲しい話には歌を オムライスには少し焦げ目を
長すぎて覚えられないその花の名前が風に微笑んでいる
深海のひかりを届けようとして青い絵の具が足りなくなった
繰り返し口にしてみる よくできたアップルパイのような言葉を
前歌集『Bootleg』で現代歌人集会賞を受賞した歌人、土岐友浩による第二歌集。
過ぎ去った平成の記憶を掘り起こし時代精神の深層にせまる「落下するヒポカンパス」、敬服する知識人の死を悼む「黒猫」など270首を収録。
土岐友浩の歌は、怯まずに「時代」と「事件」に真向かう。永劫のような歌史の果てに展かれてある現世の、ライトブルーの汀に寄せくる、その歌の姿を見よ。われらの書く一語一語は瞬間の記憶、漣のような刹那の繰り返しだ。荒らげず、みずからの口語を歌に託す土岐友浩の声の、驚くべき優しさ。まだ完了してはいないから過去は棄てない、でも僕は行くよ、と彼は言う。その背に、さよならとも言わず手を振る、それが土岐友浩の歌を読むわれらの姿だ。
(稲川方人)
カステラは乾きやすくて本題に辿りつかない感触がある
ありふれた悲しい話には歌を オムライスには少し焦げ目を
長すぎて覚えられないその花の名前が風に微笑んでいる
深海のひかりを届けようとして青い絵の具が足りなくなった
繰り返し口にしてみる よくできたアップルパイのような言葉を