硝子回覧板 / 津中堪太朗、武田ひか

硝子回覧板 / 津中堪太朗、武田ひか

販売価格: 1,000円(税込)

17cm×10.5cm 70P


岡山大学短歌会に所属する二人の歌人、津中堪太朗と武田ひかの短歌122首を収めた歌集。



【津中堪太朗】

カーブミラーはここから見えない位置にある誘いに来てくれてありがとう

共用の洗濯機使い終わるまで音の聞こえるところに座る

工程が次第に進んでいく感じここから先はしばらく強火

玄関で用事は終わる 遠雷は遠いので触れることができない

月光が遮られる時のスピード指の形だけは鮮やかで

知り合いの家に荷物を届けたら見えるところに置かれた薬

すれ違うように降り出す雨ばかりあるので駅は人で混み合う



【武田ひか】

現象という現象が迫りくる泥酔はそこまで来ています

遠さへと眼の焦点が合ってゆく釦をはめるようだと思う

ブラジルに無口な人はおるんかな クラブで踊る男女の光

アンコールひらひらとあり喝采が花になったら現れるだろう

火刑すらねじ伏せる眼だ掴み取るようにあなたも空を見上げて

貌のない獣が唸る森の中 言葉を連ね続けなければ

硝子瓶叩き割る手を叩き割る手を見つめればかがやきのさなか